ロ包 ロ孝
余程動揺しているのか、下ろした手を落ち着きなくズボンで拭き出した彼。
「蠢声操躯法だよ。昼間はどこ迄話したっけ?」
「昼間……ですか?」
たった今、目の前で起こった出来事を、まだ咀嚼しきれていないようだ。
「ああ。すいません、そうでした。お昼は確か、素質がどうとか迄だったと思いますが……」
「そうそう、そうだったな。ところで栗原君。いい店知らないか? コーラが置いてある店がいいんだが……」
「それだったら、カラオケ屋だけど、つまみが旨い店を知ってます」
∴◇∴◇∴◇∴
「ここがそのヴァシーラです」
「会社から結構近いんだな」
「歩いて10分掛ってないわね」
栗原の案内で入ったそこは、お洒落ではあるが派手ではなく、シックという表現がピッタリの店だった。
「見た? 廊下に川が流れてたわよ?」
席に座ると里美が言う。ガラスで出来た廊下の床下に川が流れる演出。壁全体が柔らかく光っていて、和洋折衷のインテリアもまたセンスが良い。
部屋は廊下に比べて暗く、ゆったりとした造りになっているので寛げそうだ。
「洒落た所じゃないか。防音もしっかりしている」
店員から廊下を案内された時も、各部屋からの音漏れは殆んど無かった。
「へへ、実は俺のデートコースの目玉なんスよ。前は料亭だったみたいで料理も旨いんです。で、お話の続きは?」
「ええっと……?」
初めての場所に浮かれて、どこ迄話したかをまた忘れていた。今度はすかさず
「素質です」
と返す栗原。自分の縄張りに居る事で、落ち着きを取り戻したのだろう。
俺は彼に音力へ入るように勧め、素質が有るようなら一緒にエージェントにならないかと持ちかけた。
「蠢声操躯法だよ。昼間はどこ迄話したっけ?」
「昼間……ですか?」
たった今、目の前で起こった出来事を、まだ咀嚼しきれていないようだ。
「ああ。すいません、そうでした。お昼は確か、素質がどうとか迄だったと思いますが……」
「そうそう、そうだったな。ところで栗原君。いい店知らないか? コーラが置いてある店がいいんだが……」
「それだったら、カラオケ屋だけど、つまみが旨い店を知ってます」
∴◇∴◇∴◇∴
「ここがそのヴァシーラです」
「会社から結構近いんだな」
「歩いて10分掛ってないわね」
栗原の案内で入ったそこは、お洒落ではあるが派手ではなく、シックという表現がピッタリの店だった。
「見た? 廊下に川が流れてたわよ?」
席に座ると里美が言う。ガラスで出来た廊下の床下に川が流れる演出。壁全体が柔らかく光っていて、和洋折衷のインテリアもまたセンスが良い。
部屋は廊下に比べて暗く、ゆったりとした造りになっているので寛げそうだ。
「洒落た所じゃないか。防音もしっかりしている」
店員から廊下を案内された時も、各部屋からの音漏れは殆んど無かった。
「へへ、実は俺のデートコースの目玉なんスよ。前は料亭だったみたいで料理も旨いんです。で、お話の続きは?」
「ええっと……?」
初めての場所に浮かれて、どこ迄話したかをまた忘れていた。今度はすかさず
「素質です」
と返す栗原。自分の縄張りに居る事で、落ち着きを取り戻したのだろう。
俺は彼に音力へ入るように勧め、素質が有るようなら一緒にエージェントにならないかと持ちかけた。