ロ包 ロ孝
「解りました。3人、いやお爺さんも入れて4人だけの秘密っすネ?
 俺は言うなと言われれば口が裂けても言わない自信が有ります、任せて下さい」

 そう聞いて里美との交際を認めた時の事を思い出す。

 ……コイツが社内中に言いふらしたんだったよな。あっという間に社長に迄知れ渡ってたっけ……。

思わず暫らくの間、彼をマジマジと眺めていた。

「や〜だなぁ、坂本さん! あの時は津城部長の命令だったんすから!」

 ふざけた調子で栗原は返して来たが、里美にしろ彼にしろ、どうして俺の考えている事が解るんだろう。そんなに俺は解り易いのだろうか……。


∴◇∴◇∴◇∴


 栗原が裏法を修得するのに、表法同様大した時間は掛からなかった。

「しかし恐ろしい術っすよね。生身の人間がこんな大きい破壊力を持てるなんて……。
 今迄悪用されなくてホント良かったっすね」

 全ての裏法を修得し、『正真正銘皆伝者』となった栗原は言った。

「いや、どうやら歴史から黙殺されている部分も多いらしいんだ。
 とにかく何も証拠が残らないから、誰の仕業か特定出来ないだろう? 謎の死を遂げた人物の最期に高倉家が、そして蠢声操躯法が関わっていないとは言い切れないようだ」

 栗原は黙りこくって眉をひそめている。

しかしこれは現代に於いても同じ事が言える。俺達は何ひとつ怪しまれないで対象に近付き、物証ひとつ残さないでその命を奪う事が出来る。

音力は、いや政府は俺達を暗殺者として行使するつもりなのだろうか。

未だ示されない『真の目的』が、俺達の行く末を暗示しているかのように思えた。


∴◇∴◇∴◇∴


 そして翌朝。


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