ロ包 ロ孝
「ええどうぞ? 転属になったばかりですし、ひとつと言わず何でも聞いて下さい。何か困った事でも有りましたか?」
三浦が真剣な顔で伺いを立ててくるので、俺は重要な不具合でも有るのかと思って聞いた。
「いえ。課長はどんな副業をされているのかと思いまして」
いきなりそっちから来たか、まあいい。
「雑貨等の輸入販売をやっています」
会社にも里美がそう伝えている筈だ。音力のエージェントだなんて、ましてやそれが政府の秘密組織だなんて口が裂けても言えやしない。
「実際やってみると結構楽しいんですよ」
と、適当にあしらうつもりが更に返してくる。
「どんな所がですか?」
んっ? 何でそんなに食い付いてくるんだっ!
俺は嘘をつくのが得意ではないので、あまり詳しく話したくないのだ。
「そ、そうですね。やはりお客さまのお顔が直接拝見出来る所ですかね」
「なるほど……あっ、時間ですね」
時計を見やってそう言うと三浦は机の灰皿を片付け、俺の食器も運んで行ってくれた。
「すいません。どうも有難うございます」
しかし、副業の事を掘り下げられると返答に困ってしまう。丁度休憩が終わってくれて助かった。
「どう致しまして。課長は先に上がってて下さい」
∴◇∴◇∴◇∴
17階のオフィスから眼下を見渡すと、人間の小ささと、そのちっぽけな存在が造り上げて来た世界の大仰さに違和感を覚える。
俺達の任務は政府の仕事とはいえ、大きな組織のほんの一角を占めるだけの物。それも決して表沙汰にされる事は無く、あくまで裏に撤した行動を要求される。その孤独感に、そして自分との闘いに、俺は押し潰される事が無いよう凛として居られるのか。
柄にも無く感傷に浸る。
ご先祖様は一体どんな気持ちだったんだろうか……。
三浦が真剣な顔で伺いを立ててくるので、俺は重要な不具合でも有るのかと思って聞いた。
「いえ。課長はどんな副業をされているのかと思いまして」
いきなりそっちから来たか、まあいい。
「雑貨等の輸入販売をやっています」
会社にも里美がそう伝えている筈だ。音力のエージェントだなんて、ましてやそれが政府の秘密組織だなんて口が裂けても言えやしない。
「実際やってみると結構楽しいんですよ」
と、適当にあしらうつもりが更に返してくる。
「どんな所がですか?」
んっ? 何でそんなに食い付いてくるんだっ!
俺は嘘をつくのが得意ではないので、あまり詳しく話したくないのだ。
「そ、そうですね。やはりお客さまのお顔が直接拝見出来る所ですかね」
「なるほど……あっ、時間ですね」
時計を見やってそう言うと三浦は机の灰皿を片付け、俺の食器も運んで行ってくれた。
「すいません。どうも有難うございます」
しかし、副業の事を掘り下げられると返答に困ってしまう。丁度休憩が終わってくれて助かった。
「どう致しまして。課長は先に上がってて下さい」
∴◇∴◇∴◇∴
17階のオフィスから眼下を見渡すと、人間の小ささと、そのちっぽけな存在が造り上げて来た世界の大仰さに違和感を覚える。
俺達の任務は政府の仕事とはいえ、大きな組織のほんの一角を占めるだけの物。それも決して表沙汰にされる事は無く、あくまで裏に撤した行動を要求される。その孤独感に、そして自分との闘いに、俺は押し潰される事が無いよう凛として居られるのか。
柄にも無く感傷に浸る。
ご先祖様は一体どんな気持ちだったんだろうか……。