ロ包 ロ孝
「美顔器かしら」

「ああ、これはフェイス・ストレッチャーと言います。物理的、生理的に顔面を歪曲させ、素顔を解らなくする装置です」

 北田が画面を入れ替えると、使用前・使用後の写真が広告のようにレイアウトされていた。

「みんな酷い顔っスねぇ!」

「いやだぁ、こんなの使ったらあたしの美貌が台無しだわ?」

「そうだな、この使用後の写真は、みんな不細工になっているもんな」

「ああ、これは素顔でなければならない時だけに使用します。顔面を作り変えるには、不細工にする方が容易なんです」

 勿論、この機械であの怪盗よろしく他人の顔そのままに変装する事は出来ない。

「ああ、ええと普段はこちらのヘルメットと、プロテクター内蔵のバトルスーツを着用して頂こうと思っているんですが……」

 パソコンの画面に映っているのは、全身黒い革ツナギで、バイクに乗る時に着るような格好だった。

「随分と大袈裟な格好ですね」

「夏は暑そうだわ?」

「俺は格好いいと思います」

「ああ、みなさんのお好みも有るでしょうから、違ったタイプも用意してみました。こちらです」

 半キャップ状のヘルメットが頬のライン迄下りてきていて、口は術の関係上丸出し。

ヘルメットにあいた目玉状の穴から外を見る、かなりコミカルなデザインだ。

「これはさすがに無しでしょう。それに、なんでマントが必要なんですか」

 モデルが着用しているそれは原色の赤で、安っぽい感じだ。

「このマントはポリカーボネイト製で、弾丸から身を守るアイテムなんですが……駄目ですか?
 ……ではこちらを」

 真っ白なパンタロンのツナギに舞踏会用の仮面。なんかこれもどこかで見た事有るぞ?


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