ロ包 ロ孝
 そう平静を装って返答するが、まだHカップの衝撃が収まらない。どうりで俺の手にも収まらない訳だ!

『でも根岸さんに頼んで、あのセクシーな方のバトルスーツもお願いしたのよ』

「随分気に入ってたみたいだしな。しかしまた裏で暗躍してたな?」

『あはは、ばらしちゃった。でもあれらはみんな、ポリカーボネイト製の不織布とそれをベクトル編みした布を重ねて作る多層構造布で。1着あたり500以上はするらしいのよ。ワン・オフだから手直しは無理そうだし……』

「あれがそんなにするのか?」

 しかし完全なる防弾機能は何よりも心強い。考えられない金額が、その機能の後ろ楯になっている気がして、俺は妙に安心していた。

『ヘルメットも30位らしいけど』

「へぇ、メットはそこまでしないんだな」

『それが違うのよ! 使い捨てよ? アレ!』

「!!!」

 日本政府はなんだかんだ言っても金持ちだ。


∴◇∴◇∴◇∴


「おはようございます」

「ああ、おはよう。昨日の雨には参ったね」

 受付嬢からにこやかに会釈を返される。

『そうだよ淳。コミュニケーションってのはそうじゃないと!』

 後ろから垣貫に話し掛けられたような気がして振り返った。当然そこには誰も居ない。だだっ広いエントランスに朝の陽差しが照り返しているだけだ。

ただ、その光は温かく俺を包んでくれている。志半ばで逝った垣貫が見守ってくれているに違いない。

「おはよう、垣貫。今日は天気がいいぞ?」

 俺はそう呟いてエレベーターに乗り込んだ。

  キンコーン

 しかしドアが開くと突然、俺は言い様も無い違和感に襲われていた。

「なっ!」


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