ロ包 ロ孝
 踏み込んで欲しくない所に入ってくるし、微妙に的外れな事を言ってくる。仕事が出来ない訳では無いのだが、一体どうしたものか……。

「うん。そんな事も有るわな」

 認めてしまえば楽になる。里美の時だってそうだったじゃないか。

「はい、なんですか?」

 しかし三浦はいつだってこうなのだ。独り言だよひ・と・り・ご・と!

「いやいや、すいません。こっちの話です。で、新しいプロジェクトのアウトラインなんですが……」

 仕事の話で誤魔化そう。


───────


「ふぅぅぅ。おばちゃん、山乃上ブレンドひとつ」

「ありゃま、溜め息が深いわね。それじゃ幸せも逃げて行くわよ? って坂本さん、コーラじゃ無くていいの?」

 俺のコーラ好きは、食堂のおばちゃん迄もが把握する周知事項である。

「溜め息なんか吐いたかい? まぁ、たまにはネ」

「らしくないでしょクールマン! でも相当お疲れなんだね」

 俺が陰で『クールマン』と呼ばれているのを教えてくれたのは、このおばちゃんである。俺がこの会社で最も信頼を置いているのは、誰あろうこのおばちゃんかも知れない。

「でもコーヒーは飲めないんじゃなかったっけ?」

 いつの頃からか、コーヒーを飲んだ後に頭痛がするようになった俺は、掛かり付けの医者に原因を尋ねてみた事が有る。

「アルカロイドアレルギーですな」

 その言葉を鵜呑みにしていた俺は、コーヒーを受け付けない身体になっていた。

しかし大人になってよくよく調べてみると、コーヒーのアルカロイドであるカフェインは紅茶にも緑茶にも含まれており、そのどちらを飲んでも変調を来さない事から「ただコーヒーが嫌いだったのだ」という結論に達していた俺だった。


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