ロ包 ロ孝
  バタンッ

「はぁっ、はぁっ、スイマセン。少し正義感出しちゃって……」

 彼は相当急いだようで、かなり息が上がっていた。

「どうした?」

「いえそれが……はぁっ、はぁ」

 荒い息を飲み込みながら栗原は辺りを見回す。

「ちょ、なによお」

 里美の飲み掛けだった梅サワーを一気にあおると、彼は話し始めた。


───────


「ひぇっ、そんなっ、お金なんか有りませんよ!」

 声のする方を見ると、派手なジャンパーを着た、いかにも柄の悪そうな男5・6人が、若いサラリーマンの2人組を取り囲んでました。

小声で話しているので、何を言ってるのかサッパリ解りません。

「キィィィイ」

 俺は地獄耳の【朱雀】(スザク)を使って聞き耳を立てたんです。

「……ゃあ……からカード出せよ。それで許してやっからよ」

 波長が合うと、彼らの会話を鮮明に聞き取る事が出来ました。

ゴソゴソとポケットを探るサラリーマンに、このままでは奴らから財布を奪われてしまうと思いました。

「待て待てぇえい!」

 そこで俺は内ポケットに有ったサングラスを掛けて、彼らから少し間合いを取って呼び掛けました。

「なんだぁ貴様!」

 一番体の大きな男が振り返って、俺を睨みました。

「わ、デケ。強そ……」

 それでも俺は頑張って、勇気を振り絞ったんス。

「やや、ややめないかぁ! その人から離れなさいっ。け、ケーサツを呼びますよ?」

「なんだとゴルァ! ムッコロサレてぇのかお前! 呼べるもんなら呼んでみろ、オラァ」

 奴は逆上してサラリーマンの胸ぐらを掴みます。仕方なく俺は、拳法のポーズを決めて、気を蓄めるフリをしました。

「ううぅぅむむむぬぬぬ」


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