ロ包 ロ孝
「あ……、あ……」

 どうしたんだ。怖気付いたのかっ、クソッ!

栗原は立ち尽くしたまま、全く動けないでいる。

「里美! 【列】(レツ)を俺の前方に張って銃弾を防ぐんだ!」

 盾の【列】を張らせていれば、俺達に危険はない。

「解った。ゥヮァァア」

「細く、小さく。息を長引かせろっ」

 里美が術を続けている中、俺は賊に向けて手の平をかざした。

「ヘイ! シュート・ミー」

 その言葉が終わるか終わらないかの内に、いくつもの銃口が火を吹く。

  パンパパンパンッパン

 だが弾丸は全て里美の張った【列】に突き刺さった。

「里美、もういいぞ、ダッ! ダッ! ダッ!」

 銃を撃って来た賊3人の足をへし折り、2階へ逃れようとしている2人に切断の【陣弱】を続けて放った。

「ピュ! ピュッ!」

「ギャ、ギャアッ」

 奴らは背中の皮膚が裂け、床を転げ回っている。

残るは2人だ。

俺は通路に立ち尽くしているその賊2人に向き直り、手をかざす。

「〇△〜□! ○△〜□!」

 賊は抵抗するのをやめ、両手を高く挙げた。「降参だ!」とでも言っているのだろう。

「里美、栗原を頼んだぞ!」

 すっかり萎縮してしまっている栗原を里美に託すと俺は2階に駆け上がり、逃げ遅れた賊が居ないか確かめる。

 ……この窓から入って来たのか……電柱を伝って来たようだな。

「ヮァ、ァァ、ァァァ」

 俺は空中浮遊の【北斗】(ホクト)を道路に放ち、力の返り具合を見計らって窓を出た。ゆっくりと降下して、やんわり地面に着地した。

 イケナイ! 人前でつい裏法を使ってしまった!

慌てて周りを見回したが、取り押さえた賊を連行したり、現場を検証したりで皆忙しくしていて、こちらを注視している者は無い。


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