ロ包 ロ孝
 しかし、危なく裏蠢声操躯法が知れてしまう所だった。

今うっかり使った【北斗】は、【列】の裏法だ。【列】がひと所に留どまって盾となるのに対し、【北斗】はその盾を押し出す術だ。

弱く放てば落下の際にクッションとなり、強く地面に放つと身体が高く持ち上がる、空中浮遊及び超跳躍の術である。

そうこうしている内に、部下へ檄を飛ばす古内警部補を見付けた。

「ご苦労様です。外に居た賊は捕まえましたか?」

「ああ坂本さん、お陰様で。本来店内に配置する人員を外に回す事が出来たので助かりました。ありが……」

  パンパンパンッ ガシャガシャッ!

「なんだ! 何か有ったのか?」

 銃声だ、店内から聞こえた!

「里美! 栗原っ! 怪我は無いか!」

 慌てて駆け付けると、栗原が茫然と見つめる先に賊の1人が「くの字」になってめり込んでいた。天井が大きく裂け、その端にぶら下がっている賊は、苦しそうに呻き声を漏らしている。

「あ……あいつが急に立ち上がって山崎さんに銃を向けたんす。俺、恐くなって【空陳】を……」

「加減しないで放ったのか!」

「いや、しました! 加減はしたつもりだったんすけど……」

「ゴフッ!」

 天井の男が大量に吐血した。ボトボトとこぼれる鮮血が、床を真っ赤に染めていく。

「救急車は!」

「他の怪我人を乗せて行ってしまいました」

「酷いな……これはレスキューだ。レスキューを呼べ!」

 古内警部補が部下に命じた。


───────


 20分が経ち、やっとレスキューが到着すると直ちに救出活動が始まった。

 パチンコ台の上に天井迄の足場を組み、男の身体を慎重に下から支え固定する。グチャグチャに絡まった天井の下地部分が身体の至る所に突き刺さっていて、救出は困難を極めた。


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