ロ包 ロ孝
 前の三浦へなら、嫌味を込めた体(テイ)で言った事だろう。しかし今は本心から笑って冗談が言える間柄だ。だからこのモヤモヤは余計に俺を戸惑わせる。

その気持ちを払拭するべく、俺は机に山積みとなった書類へ没頭する事にした。

そうだ、今度三浦も音力に誘ってみよう。

栗原には可哀想だが、やはり里美と2人だけでは限界が有る。今度また、いつあの時のような凶悪犯と対峙するかも解らない。

安全を確保する為に3人は必要不可欠だ。栗原の穴を埋める人材として、信頼出来るパートナーとして、三浦は俺達に取って打って付けの人物だった。


∴◇∴◇∴◇∴


「栗原くん、まだ連絡寄越さないわねぇ。淳の所なら解るけど、あたしに迄音沙汰なしってのはどういう事かしら」

「何で俺なら解るんだ?」

 俺に連絡しない理由とは何だ?

「だって栗原くん、淳にコテンパンに怒られると思ってるでしょ」

 そういう事か。

「勿論ケチョンケチョンにやっつけるさ」

「駄目よぉ、優しく迎えてあげないと」

 里美と2人で例のカラオケ屋に来ているが、2人だと通される部屋も狭くなるし、どうも居心地が悪い。

「あいつが居ないと寂しいのか?」

「べつにそんな意味じゃないわよぉ。でも、淳こそつまらなそうに見えるんですけど」

 確かにそうだ。あの人なつこい、本当の弟みたいな栗原が居ないのは、正直寂しかった。

「でも栗原が殺したあいつ、本国では悪名高い凶悪犯だったらしいから、難なく裏で政治的決着が付いたみたいだな」

「どんな決着? それ、栗原君は知ってるの?」

「あの事件自体が無いものになったらしい。
 ……教えたくても自宅の電話は繋がらないし、携帯にかけても通じないんじゃ連絡の取りようが無いからなぁ」


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