ロ包 ロ孝
 え? えっ? 何が? 

 三浦はテーブルに頭をこすり付けんがばかりに頭を下げた。

「大きな声では言えませんが、私は音力から派遣された者なんです」

「な! 何だって?」

「正確には副業として諜報活動をしているとでも言いますか……」

 そうか、そうだったんだ!

 俺の中にくすぶっていた数々の疑問が今、一斉に音を立てて繋がった。音力は間者として三浦を送り込んでいたのだ。

 会社の仕事が終わった途端に音力から電話が有ったり、普通なら知り得ない警察の情報を言ってみたり、昼休みを過ぎてもデスクに戻らなかったりをしていたのは……そういう事だったのだ。

「こういう立場にあった私が言っても真実味に欠けますが、坂本さんとは人間同士として付き合いたいと思っています。ですから、この責務が非常に重荷になっていたんです」

 三浦は頭を繰り返し下げながら許しを乞う。

「そうですか。良く打ち明けてくれました」

 しかし俺は三浦を責めなかったし、そのつもりも無かった。今の告白で彼への信頼がより大きくなっていくのを感じたからだ。

「ではこうしましょう」

 俺から半ば強引に音力に誘われたがどうしよう、と音力側に相談する。音力も余計な疑問を持たれないよう、様子見で入会しろと言う筈だ。

 修練を積んだ上で素質が有る様なら、俺の元で働いて欲しいと伝えた。

俺は更に三浦への信頼が揺るぎ無い事や、三浦の家族の将来、下世話な話だが収入や退職後の安定等のメリット等も聞かせて話にクロージングを掛けた。

バリバリの営業トークである。

「解りました。ご期待に沿えるよう頑張ります」

 俺の技量か三浦の素直さか、ともあれ修練には参加してくれると言う。後は三浦に素質が有ればいいのだが……。


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