ロ包 ロ孝
「だから違いますって! こいつは私にいやらしい事をした犯人です」

「犯人? この人は被害者なんですよ?」

「ああん! どう言えばいいのかしら。私はこいつから乱暴されたんです。それを或る人が現われて、あっと言う間にやっつけてくれたんですっ」

 彼女はひと月程前のその日。友達とライブを観た帰宅途中、犯人に声を掛けられたのだと言う。

「私もライブで盛り上がった後だったから、つい開放的な気分になってしまっていて……」

 始めは腕や肩を触る程度だったが段々エスカレートし「脱げ、ここでヤらせろ」と言うように迄なった。

 彼女は危険を感じて脱走を試みたが易々と捕まってしまい、押し倒された所にその彼が現われたというのだ。

「その或る人と言うのは?」

「暗くて良く解らなかったのですが、拳法みたいなものを使っていました」

「は? 拳法って、カンフーとかのアレですか?」

 古内警部補は半信半疑で話の続きを聞いた。


∴◇∴◇∴◇∴


「お、お、おい! やややややめないか! こんな所でエッチな事をしたらマズイだろう!
 彼女も嫌がってるんだから、諦めたらどうなんだ?」

 暴漢はイキナリ彼女の頬を平手打ちした。

「こここの野郎! よせ! 俺を怒らせると後悔するゾ?」

 暴漢は逆上して彼女を問い詰める。

「あの頭がオカシイ奴はお前が連れてきたのか?」

 と拳を振り上げた。

「殴られる!」と彼女が思った瞬間!

「ダァッ!」

「うわぁっ!」

 彼女の上で馬乗りになっていた暴漢は、何かの力に依って弾き飛ばされた。

「ダッダッダダダダダァッ」

「ギャッ、ぐほっ、オッぐぇゴホうげっギャァッ!」


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