ロ包 ロ孝
 暴漢は何度も宙を舞い、集団リンチを受けたような様相で倒れ込んだという。

「お、おねぇさん。は、早く逃げな」

 彼女は急いで礼を言い、言われるまま現場を後にした。


∴◇∴◇∴◇∴


「でもその人、犯人に指一本触れなかったんですよ?」

「! く、栗原さんだっ!」

 古内警部補は身を乗り出して思わず叫んだ。

「その人の顔は見ましたか?」

「いえ、真っ黒な影だけしか解りませんでした」

 間違いない!

彼女の応対を部下に任せ、慌てて捜査資料を調べ直した。

「訳の解らない事を言われた」

「気功のような物で飛ばされた」

「黒いヘルメットで顔を隠していた」

 何で今迄見過ごしていたんだろう、これはあのチームの術に違いない! 栗原さんが行方知れずになっているのは、坂本さんからも聞いたじゃないか!

「被害者が襲われたと同時刻に有った事件の被害届けを洗い直せ。小さい物迄全部だ!」

 部下にそう命じると古内警部補は音力に向かった。


∴◇∴◇∴◇∴


『淳! 栗原くんからメールの返事が来たわ』

「何? 本当か?」

 里美から電話が入った。

「でも私用電話は駄目だ。また後でな!」

『ホンットに固いんだからぁ!』


───────


「淳、あたしは終わったわよ」

「おお、俺も今帰る所だ。どれ見せてみろ」

 今日の仕事を早々に片付け里美が俺の課に来た。

「ちょっと待ってネ……はい」

「いや、やっぱり腰を落ち着けてから読もう」

 俺達は久し振りにあのショットバーに向かった。


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