ロ包 ロ孝
「あれ? お店が変わってるわ」

「例の騒動の所為かな……」

「関係無いわよ。でも今度は、ちょっとシックで良さそうな感じね」

「じゃあ、入ってみようか」

 店内は暗く、洒落た感じで落ち着いた雰囲気だった。半個室になったボックス席は込み入った話をするのにピッタリだ。

「それで、奴は何と言って来たんだ?」

 間接照明で薄暗い店内だが、テーブルにはダウンライトのピンスポットが降り注いでいる。その光に照らされて、余計に里美が艶かしく見えた。

「とにかく平謝りで、内容は薄いんだけど文がやたらと長いのよ……淳にもまず謝りたいけど、アドレス知らないって言うから教えといたわ」

 大きくて潤んだ瞳、実際よりも大分若く見える肌理(キメ)の細かい白い肌。少し薄めの唇をポッテリと彩っているグロスの妖しい輝き。

「ちょっとぉ、聞いてるのぉ?」

 俺の視線に気が付いて、照れて怒った振りをする里美。

「あ、ああ。なら直接電話して来いって言えよ」

 俺から叱られると思ってビビってるに違い無い。本当に小心者だ!

「駄目よ淳。もっと温かく迎えてやらないと」

 しかし三浦の件はどうしよう……。それは彼に素質が有ると解ってから考えるとするか。

「やっぱり人を殺めた事がショックだったみたいネ。でも、政治的決着が付いたっていうのは朗報だったようよ」

 栗原の事を話すと今迄は暗くなってしまった俺達だったが、消息が掴めた今、里美も俺も普段通りに話せるようになっていた。

「事情はどうあれ、今週中には会社に出て来るように言っておけ」

  ヴィーィン ヴィーィン ヴィーィン

 俺の携帯が震えている。根岸からの電話だろうか。


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