ロ包 ロ孝
「ご注文はお決まりになりましたか?」

 込み入った話になったので、うっかり注文するのを忘れていた。

「ああ、すいません。じゃ……」

 俺はコーラと軟骨の唐揚げに肉豆腐。里美はビールに茄子の田楽を頼んだ。

「しかし、栗原はどうなっちゃうんだろうな」

 電話の内容を里美にも教えて尋ねてみる。

「音力の内規3項目は大した問題でも無いと思うけど……」

「そうだよな、確かに殺したのはマズかったよなぁ。お、里美。これはイケるぞ?」

 可愛く「ア〜ン」している里美にひと口、肉豆腐を放り込む。そして俺は審議について深く考えない事にした。冷たいようだが、結果が出てみなければ行動の取りようも無い。ここは威風堂々としてどっしり構えていよう。


∴◇∴◇∴◇∴


 そして音力内の大会議場で査問委員会が開かれた。丁度裁判所のそれのように、部屋の中心に被告席が設けられている。

お偉方だと一見して解る、重厚な雰囲気を醸し出した老紳士達が並んでいて、否が応にも緊張してしまう空気がそこには有った。

「おほっ、おほんっ! 栗原伸浩君」

「は……い」

 神妙な顔付きで栗原は答える。

あれから一週間。警察は『姿無き通り魔事件』の捜査を取りやめ、捜査段階に於いてのミスである事や、実は被害者が加害者であった事。

通り魔と思われていた人物は犯罪を未然に防ぐべくして行っていた事等を発表していた。

「今回は4件の審議項目が有ります。早速最重要項目です」

 委員長の声が会場に重々しく響き渡る。

「来たっ」

 栗原は肩を竦め、目を固く閉じてその時に備えた。


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