ロ包 ロ孝
『坂本さん、お仕事です』

 根岸お決まりの台詞だ。彼からの指令は、いつからかこれで始まるようになった。今では会社人間としての俺と、音力エージェントである俺との切り替えスイッチともなっている。

……さて今回のオペレーションは?


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 最近、繁華街の喧騒に紛れてのノックアウト強盗が横行するようになった。被害者に年齢や性別等の偏りは無く、一時有った『オヤジ狩り』の無差別版といった所だろうか。主たる犯行グループの摘発・掃討を行うのが今回俺達に課された任務だ。

所轄は管轄内に発生している暴力団同士の勢力争いに人員を取られていて、正直こちら迄手が回らないのだそうで、満を持して俺達の出番となった訳だ。

賊の手口は、数人のチームが標的となる人物を囲んで暗がりに連れて行き、男性の場合は恫喝と暴力で抵抗出来なくして金品やカードを奪い取る。女性には乱暴した挙げ句に、ブランド物のバッグからアクセサリー、果てはジャケット類やブラウス迄、それこそ身ぐるみ剥いでしまうという、悪質極まりない物だった。


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『主に発生しているのは豊山区海袋周辺なのですが、模倣犯も各所に出始めています。
 社会現象になる前に悪の芽を摘んで戴きたいきたいのです』

 俺は三浦を見やって目配せをし、頭を下げた。今回の案件でも彼からのサポートが必要になるだろう。

「解りました。その被害発生状況を教えて戴きたいのですが……」

『少々込み入っていますので北田をやります。古内警部補も同行して戴きますから、詳しい話も聞けるのではないでしょうか』

 あの長話を聞かなければならないというのは意気消沈だったが、古内警部補に会うのは暫く振りなので、出来るだけ彼と話しているとしよう。


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