ロ包 ロ孝
「おはようございます」
「ああ、おはよう。若いっていいねぇ」
一夜明けて会社に来たものの、昨日からのネガティブシンキングを引きずっているらしい。心の内がそのまま言葉になってしまっている。
「? は……い? いえ、坂本さんもお若いですよ?」
「ああ、ごめんゴメン。何でもないんだ。今日も頑張ろう!」
───────
「坂本さん。音力の件なんですが……」
仕事に打ち込む事で何とか半日をやり過ごし、飯はトップオブザマウンテンの新メニュー『サイコキ熱し酢炒め定食』を食べて昼寝でもしてしまおうと思っていた俺は、三浦が声を押し殺してそう囁き掛けて来たので、彼に付き合う事にした。
栗原失踪事件の頃、俺の勧めで音力に入った彼だったが、その後の動向はとんと知らされていなかったので、正直気になっていたのだ。
「あれからどうされました?」
「それが……あまり芳しく無いですね。幾ら頑張っても【兵】(ピョウ・癒し、鍛錬)以降に進めないんです」
栗原が戻ってきた事で三浦はもはや俺達のチームに『必要の無い人員』となってしまっていたから、才能が無い事を知らされて逆に安堵している俺が居た。
彼に対して老後の生活がどうの、子供の将来をこうのと散々脅しておいて、要らなくなったら「ハイさよなら」というのも気が引ける。都合のいい話だが「才能が無ければそれでおしまいなのは術の所為であって、俺の所為じゃない」そう何度も頭の中で繰り返して自分に言い聞かせた。
「そうですか……非常に残念ですが、この術を修得する為には素質の有無が重きを占めるんです。
勿論術修得の為の才能であって人の優劣を量る物では有りません……そのぉ……」
三浦はおもむろに手を上げ、にこやかに俺の言葉を遮ると言った。
「ああ、おはよう。若いっていいねぇ」
一夜明けて会社に来たものの、昨日からのネガティブシンキングを引きずっているらしい。心の内がそのまま言葉になってしまっている。
「? は……い? いえ、坂本さんもお若いですよ?」
「ああ、ごめんゴメン。何でもないんだ。今日も頑張ろう!」
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「坂本さん。音力の件なんですが……」
仕事に打ち込む事で何とか半日をやり過ごし、飯はトップオブザマウンテンの新メニュー『サイコキ熱し酢炒め定食』を食べて昼寝でもしてしまおうと思っていた俺は、三浦が声を押し殺してそう囁き掛けて来たので、彼に付き合う事にした。
栗原失踪事件の頃、俺の勧めで音力に入った彼だったが、その後の動向はとんと知らされていなかったので、正直気になっていたのだ。
「あれからどうされました?」
「それが……あまり芳しく無いですね。幾ら頑張っても【兵】(ピョウ・癒し、鍛錬)以降に進めないんです」
栗原が戻ってきた事で三浦はもはや俺達のチームに『必要の無い人員』となってしまっていたから、才能が無い事を知らされて逆に安堵している俺が居た。
彼に対して老後の生活がどうの、子供の将来をこうのと散々脅しておいて、要らなくなったら「ハイさよなら」というのも気が引ける。都合のいい話だが「才能が無ければそれでおしまいなのは術の所為であって、俺の所為じゃない」そう何度も頭の中で繰り返して自分に言い聞かせた。
「そうですか……非常に残念ですが、この術を修得する為には素質の有無が重きを占めるんです。
勿論術修得の為の才能であって人の優劣を量る物では有りません……そのぉ……」
三浦はおもむろに手を上げ、にこやかに俺の言葉を遮ると言った。