ロ包 ロ孝
「ああ、坂本さん。正体を隠す為なんですから申し訳ありませんがそこの所は辛抱して下さい。それにこのフェイスストレッチャー2は、生理的食塩水を注入する注射針を無痛針に変更して、高性能高トルクのモーターで駆動する仕様にしたので、痛みは殆んど感じませんし、瞬時に変装が完了します。前作をみなさんは使った事が有りませんが、被験者兼モデルさんが言うには結構痛かったようですので、今回のFS2は先行型より格段の進歩が為されているんですよ?」

 とは言っても嫌なものは嫌だ。慣れないのは仕方ない。それに前作は痛かったのか? そんな事は全く予測してなかったから、使用機会が無くて良かった。実を言うと俺は注射が大嫌いなので、無痛針とはいえ今回の変装は非常に不快なのだ。

もしこれが痛みを伴うなんて事になったら、絶対逃げ回って拒否していたに違いない。こんないい歳をしたオッサンが実は何より注射が嫌いだなんて所を、2人に知られないで済んだのも幸いだった。

「ああ、それにこのFS2は前作と違って『同じ変装』が何度でも出来るんです。今回のようにある程度の期間、素顔でいなければならない場合に有効です。それとですね(……以下略……)」


───────


 そうして各自変装を施した後、俺達3人は商店街の顔役へ挨拶をする事にした。最初に伺ったのは古くより地元に続く酒屋さん。ご主人で9代目である。

「どうも、お忙しい所を申し訳ありません」

「いや、こちらも助かるよ。何せ物騒だからね。売り上げも心なしか落ちてきたようだし……」

 店々を回って俺達が自警団活動を行なう旨を報告すると、どの顔役も諸手を上げて歓迎してくれる。

活動するのに支障は無さそうだ。


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