ロ包 ロ孝
「はい坂口さん、コーラ。ここの店舗も安くはしているけど、不動産屋の竜ちゃんはしっかりお金を貰ってるし……
 みんな商売人だからタダじゃ動かないんだね。そちらの綺麗な人はなんておっしゃるんだね?」

「山岸です。お世話になります」

 里美。少しは謙遜も必要だと思うぞ?

上品ぶって腰を折る彼女を見据え、念を送ってみたが……全く通じなかった。

「坂口さんに山岸さんに栗林さんだね。大変だけどしっかり夜回りお願いするね?
 しかし物騒な世の中になったもんだね」

 1回さらっと名前を聞いただけですぐ覚えてしまうとは、凄い記憶力だ。お得意さんを識別する商売上の能力だろうが、やはり変装をしておいて正解だったかも知れない。


───────


 最初の巡回の時には酔っ払いのいざこざ以外、目立った異常は何も無かった。まだ宵の口だという所為も有るだろうし、資料に依ると、実際犯行が行われているのは午前0時前辺りが一番多い。

「これからが勝負だぞ? みんな。しっかり気を引き締めて行こうな!」

「はい」「解りました。気合いっすね!」

 そして3回目の巡回が終わり、時計は深夜1時を回っている。

「さぁ。もう電車も無くなったし、反省会をして今日は解散とするか」

 初日は平和に終わった……と思っていたのは俺達だけだったのだ。


∴◇∴◇∴◇∴


『おはようございます坂本さん、もう起きてらっしゃいますか?』

 電話の相手は珍しく、古内警部補だった。

「ええ、商工会の人に事務所を用意して戴いたので、今日は朝からみんなして設備を整えている所です」

 俺と栗原が重量物の運搬で、里美は清掃全般だ。


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