ロ包 ロ孝
『ちょっと淳、声が大き過ぎるゎよ!』

 里美が【闘】を使って囁き掛けて来た。

『耳を塞いでる通行人の人も居るじゃない、ちょっとはセーブしなさいよ!』

 おお、そうだった。元々声は大きい方だが、俺達は更に修練を積んでいるのだ。でも、ボーイスカウトの時には大きな声を誉められたのに、大人って難儀なものだな。


∴◇∴◇∴◇∴


「それで、みんなの感触はどうだったんだ?」

 俺達はチラシを全部配り終えて事務所に帰ってきた。

「最初にしては上々じゃないかしら、質問してくる人とかも居たし」

「こっちもバッチリっすよ、みんなウケてました」

 栗原の報告は、少しピントがずれていると思うが……。

「でも……」「しかし問題はですね」

「呼び込みの人みたいだって言われちゃうのよ」「呼び込みの人みたいだって言われちゃうんすよ」

 そんなに声を揃えなくてもいいじゃないか! 俺だって何度も言われたから解ってるって!

「却ってこの格好の方がインパクトがあっていいんだよ、解って無いなぁお2人さんは!」

 完全な負け惜しみである。


───────


 俺達がチラシ配りをしている間、北田に周辺地図を検討させて30分交替のダイヤグラムを組んで貰った。彼はさっさと仕事を終え、音力へ戻ったようだ。

残されていたそれは、巡回コースも綿密に考えられていて、死角を最大限に減らす工夫がされている。

「最初は俺が行きますよ。若い者が働かないと駄目っすからね」

「行ってらっしゃい」

「年寄り扱いするんじゃない!」

「へへっ」

 舌を出し、おどけたポーズを取ると栗原はそそくさと事務所を出て行った。


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