ロ包 ロ孝
「やっと2人きりになれたわね、淳!」

「なんだ?」

 栗原が出て行くとすぐさま里美がしなだれ掛かって来た。

「ね、キスしよ?」

「こんな所でか? 誰が入って来るかも解らないのに」

「大丈夫よ、ネェほらっ」

 目をつぶり唇をとがらせて口付けを待つ里美。

 うむむ、可愛い。

白い肌はファンデーションが要らないくらいなめらかだし、歳より5つ6つは若く見える。

「ほらほら早くぅ」

「解ったって」

 俺は「仕方ない」という素振りで、里美の顎を引き寄せた。

「坂口さん! 今夜のご注文……ご……チューって、若いっていいもんだね!」

「あ、いや、山岸の目にゴミが入ってしまったので……」

 突然『銀杏婆ちゃん』に急襲を掛けられとっさに返したが、誤魔化せただろうか?

「ゴミをベロで取ってた訳だね? つまり栗林さんには内緒にしとけばいいんだね?」

 誤魔化し切れていなかった。

「オホンッ、後30分程したら栗林が帰って来ますので、コーヒーをお願いします。
 今はコーラとぉ、里美はコーヒーでいいのか?」

 わざとらしく咳払いをして平静を装う。里美は少しケンの有る調子で言った。

「あたし、ロイヤルミルクティーをアイスでっ!」

「おやおや山岸さんはご機嫌斜めだね」

 銀杏婆ちゃんはそう言うと店に取って返した。

「そりゃキスの邪魔をされたんですもの。機嫌も悪くなるわよ。でもアイスロイミーティーだったら、暫らく時間掛かるから続きが出来るわ?」

 それを計算しての注文だったのか! さすがに抜け目無いな。

里美は少し胸をはだけさせながら言う。

「見える? ほら、触ってもいいのよ?」


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