ロ包 ロ孝
 昨日は幸い何事も起こらなかったが、恐らく俺達の活躍というよりも、単に犯行が行われなかったというだけである。

「今日はこれからお時間取れますか?」

「ええ、大丈夫です。アレですね?」

 チラシ配りのジェスチャーをしてニカッと笑う彼は、どうやら察しもいいようだ。

「すいません。早速ですがお願いします」

 北田が増刷してきたチラシの束を渡し、駅の北側を担当して貰う。


───────


「自警団活動にご協力お願いします。犯罪撲滅へ力を貸して下さい!」

 キビキビとして野太い、とても通るいい声だ。その風貌とも相まって、注目度は抜群である。

「いいですね。そんな感じでお願いします。あ、制服のジャンパーをお渡ししないといけませんね。サイズを伺えますか?」

「えっ?」

「いや、サイズを」

「じ、自分達も着るんですか? その呼び込みみたいなジャンパー」

 渡辺は身体を硬直させたまま動かない。

「一応制服なんで……、いや、ですがデザインの変更を考えていますから、ご参加戴けるメンバーの名簿にサイズも記入しておいて下さい」

 ユニフォームのダサさが自警団募集のネックになったら洒落にならない。根岸には悪いが、この呼び込み風ジャンパーは封印しなければいけないようだ。


∴◇∴◇∴◇∴


「ああ、お待たせ致しました。ABCの3案を考えてみたんですけど、どうでしょうかね……」

 デザイン画を抱えて北田がやってきた。ユニフォームはやはり彼に頼み直す事にしたのだ。3案あるジャンパーはどれも根岸のそれより数段センスが良かった。

「どうですか?渡辺さん。第1号ご賛同者として、記念に選んで戴きたいのですが」


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