ロ包 ロ孝
 やはり!

一緒に仕事をして感じた事だが、里美の情報収集力は下手なスパイよりも断然優れている。【音力】内でも暗躍しているに違いない。

「【第五声】はね、3倍活性共鳴発声なの。【三声】の強力版ネ。それでね……」


───────


 里美の情報で【第八声】迄は解った。しかしそれ以降は彼女も把握していないという。

だが聞けば聞く程この話は祖父の言っていた事と似通っている。高校の頃、鼻で笑いながら聞いていたので忘れてしまった記憶が、次々と脳裏に甦って来た。

 そういえば爺ちゃん。裏の蔵にその事を印した巻物が有るとも言ってたな。

「里美。いや山崎」

「折角名前で呼んでくれたのに、なんで言い直すのよぉ!」

 絡んでくる里美をよそに俺は祖父の話をした。

「……え? それは凄い! これは偶然と言うより運命ね。坂本さんはその巻物を見た事が有るの?」

「いや、無い。今まではテッキリ爺ちゃんのホラ話だと思ってた。
 俺と一緒に来て探してくれないか?」

「それってもしかして、お泊りのお誘い? 坂本さんのお家にお呼ばれだぁ、嬉しい!」

 小躍りしてはしゃぐ里美に、誤解をさせないよう付け加えた。

「いや、父の実家だよ。親が離婚してから随分と行ってないから、少し心細くてな」

「どっちにしても嬉しい」

 と手放しで喜ぶ里美を見ている俺も、快諾して貰って助かった。

いや、実を言うと……2人で小旅行が出来ると考えただけでドキドキしている俺が居る。本当は俺も嬉しくて仕方なかったのだ。

しかし女下手な俺は、こういう時にどんな表情をして、どんな言葉を掛けていいのか良く解らない。

 今度垣貫に会ったら聞いてみるとしよう。


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