ロ包 ロ孝
「やぁねぇ達っつぁん! 教えられないって言ってるじゃない!
 聞き分け無い事言ってると、ブン投げるわよ?」

 里美、お前がやってるその構えは催眠術だろ。

「マジですか? いいなぁ……自分、強い女の人って憧れちゃうんですよねぇ……ブン投げられてみたいなぁ」

 恍惚の表情を浮かべている渡辺は、どうやら『任せるタイプ』頭文字Mのようである。目下の者に接する時の里美は『攻めるタイプ』だから、めでたくSとMの主従関係が成立する。

「ダメっすよ達っつぁん! 山岸さんは俺のご主人様なんだから!」

「それにあたしのご主人様は坂口さんだしネっ!」

「なんだぁっ! そういう構図が出来上がってたのかぁっ!」

 渡辺は机を叩いて悔しがった。

こんな和気靄々とした雰囲気も出来てきたが、今日は週末だ。そうのんびりもしていられない。北田が作成した週末用巡回プログラムに合わせ、用事の有るメンバー以外は全員召集されている。

「今日はさすがに事務所の狭さを感じるわね」

「この制服が無かったら、うちらもごろつきの集まりみたいっすよ?」

 善意で集まってくれた人達とはいえ、みんな賊を確保しようと目に闘志を燃やしている猛者達だ。傍から見たらちょっと怖い雰囲気ではある。

「じゃ、今日の巡回ルートと班分けを発表するわね」

 ホワイトボードを指し示しながら発表する里美。

「……しかし北さんのコース選定とダイヤグラムは凄いな。
 どういう頭の構造になってるんだか見てみたいよ」

 今迄の巡回プログラムより格段に機動性を増したそれに俺が感心していると、耳元で里美が囁いてきた。

「ふふっ、それは北ちゃんとベッドを共にすれば解るかも知れないわよ?」


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