ロ包 ロ孝
「あら北ちゃんそのパソコン、おニューじゃない!」

 折角口数の少なかった北田に、喋る絶好の機会を与えてしまった里美。俺の努力が水の泡だ。

「ああ、サトッチ。気付きましたか? これ、凄く薄型なんですよ。ほら、完全個人用で指紋認証に併せて電源オンだから起動も早いんです。それでいてバッテリーもリチウムイオン電池で持ちもいいですしね。加えてメインメモリの容量も前のパソコンの10倍ですし、ペンティアムも……」

『また余計な事を聞いちまったな!』

 俺は【闘】で語り掛け、里美を睨み付けた。

「あ、アタシちょっとトイレに……」

 ちっ、逃げられたか。

「ほら北さん。パソコンの説明はいいから、本題の方をお願いしますよ!」

 俺が促すと、北田は班の中から更に有事の際に対応する人員を3名選出した。トラブルの度に班からその1名ずつを抜いては処理専用班を構成する算段だ。同時に3つのトラブルが起きても対応出来る。

「みんな喉が乾かないかね? 注文が有ったら聞くんだね」

「お願いします。俺は例のやつで。皆も好きな物を頼みなさい」

 適応力自慢の俺は、いきなり『銀杏婆ちゃん』が現れても普通に対応出来るようになっていた。

「よし、喉を潤し終わったら、各自自分の班に戻ってこの旨を伝えてくれ」

「解りました」

「了解です」

 もう賊の好きなようにはさせない。海袋エンジェルス・リターンズの始動だ。


───────


 被害者の女性は頭部に強い衝撃を受けていたが『銀杏婆ちゃん』こと舘野杏さんの素早い通報と適切な応急措置で一命を取り留めた。

一方俺達はその後も用心の為に明け方迄巡回を続けた。


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