ロ包 ロ孝
「山岸さん『銀杏婆ちゃん』が来てますよ、注文は何に……ああっ?」

 階段を登って来た渡辺は、里美の胸に顔を埋めている栗原を目撃した。

「あっ、あっ、いいなぁ〜。山岸さん、自分もお願いしますっ!」

「らめっすよぉ、達っつぁん」

「いや、自分は山岸さんにお願いしてるんです。是非俺にもそれをっ!」

 体育会系の押しと勢いで頼み込まれて、里美も断り切れなくなってしまった(何故!)

「……え? じゃ、少しだけよ?」

「失礼しまっす!」

  バフッ!

「うわぁっ、凄げぇ!」

 この非常時にこいつらは一体何をやってんだか!

「里美さぁん。俺も、もう少しぃ〜」

「栗林! バカ言ってないでさっさと行って来なさい。達っつぁんもいつまでやってんのっ?」

 里美は渡辺の金髪頭をバシバシひっぱたいて、ようやく身体から引き剥がした。

「ああっ、いいです。山岸さん、もっとぶって!」

 顔を紅潮させ、上気している渡辺は、かなりのアブノーマルだ。


───────


 栗原達が巡回を始めて暫らく経つと、ついにその機が訪れた。

「栗林さん。アレ!」

 指し示された方を見やった栗原は、数人の男達に囲まれ、暗がりに連れ込まれようとしている人影を見付けた。

「あれは……多分賊っすね。奴等に気付かれないように後を尾けましょう」

 気配を殺し、賊と思われるグループを尾行する栗原達。ひと気の無い方、明かりの届かない方へと進んでいくのを見ると、見立ては間違っていないようだ。

ビルの裏手に位置する、物置小屋のような場所に来ると彼らは、辺りを警戒しながら移動の足を止めた。

「姿勢を低く、物陰に隠れて」

 メンバーに指示を出す栗原。


< 193 / 403 >

この作品をシェア

pagetop