ロ包 ロ孝
 暫らく間が開いて……。

「そうじゃった……。離婚して、母方の姓になったんじゃよな……。高倉の、一番声の大きな逸材じゃったのに……。
 そろそろ術を教えるべき時が来たと思うとった矢先に、淳はパッタリ来んようになってしまったからのぉ」

 祖父の語勢が急に弱くなったのを気にして「あたし、まずい事言ったかしら」と慌てている里美をやんわりと制して、

「そうそう! 爺ちゃん、今日はその事で来たんだよ」

 俺は早速本題を切り出した。


───────


 今迄の経緯を掻い摘んで話し、肝心な巻物の所在について聞いてみる。すると話を聞いている内にすっかり考え込んでしまった祖父が言った。

「う〜む……巻物は確かに此処に有る。しかし淳よ! その【音力】とかいう奴らは何故代々に渡って血族内で伝えられて来た秘術を知っているんじゃ?」

「それはまだ解らない。
 何せこの前こいつと一緒にサークルを見学して来たばかりだし……」

 里美も首を傾げながら微笑んでいるだけだ。内情迄は掴んでいないのだろう。

「そうじゃったか。しかし解せんのぉ」

 実際【音力】には、余りにも不透明な部分が多い。自己啓発サークルだとの大義名分を掲げてはいるが、参加料金、参加人数とあの設備の充実振りが釣り合わない。

それに全国各地に支部を持つというその規模で、今迄名前を聞いた事が無いというのも不自然だ。

【音力】は一体何の目的で術者を鍛えているのだろうか。

新たな疑問が興味となって俺の中に湧き上がって来た。

「爺ちゃん。俺にもその術を習わせてくれないか?」

「……うむ、教えてやりたいのはやまやまなんじゃが……高倉の姓を名乗らぬ者に、術を伝える訳にはいかないのぉ」


< 21 / 403 >

この作品をシェア

pagetop