ロ包 ロ孝
 その3日後に、俺はアポ無しで海袋エンジェルスの事務所に来ていた。内部は少し調度品が増えたのと、壁のクロスが貼り替えられていて、明るい雰囲気になった他には大差無い。

「渡辺さんも遠藤さんも巡回に出ていますが……お待ち頂けますか?」

 事務所では電話番1人を残して、他のメンバーは仮眠を取る方式にしたようだ。

ホワイトボードの巡回中欄に付いている磁石には、渡辺や遠藤の他にも懐かしい名前が並んでいる。大して前の事ではないのに、何故か遠い昔に経験した出来事のようだ。

目を細めながらそれを眺めている俺を、彼は穴が開(ア)く程凝視している。その彼だってそう、身体は小さいのにいつも元気で頑張っていたっけ。余り放っておくのも可哀想だから、彼に質問の機会を与えてやる事にした。

「何か私の顔に付いてますか?」

 わざとらしく手で頬をこすりながら聞いてみる。

「いえ、すいません。私の知っている方にそっくりなんですが……その、ちょっと……」

 俺の顔をまじまじと見て考えを巡らせている。

「ははは、そうです。坂口ですよ、中村さん。あの節はお世話になりました」

 彼は懐かしそうな、それでいて不思議そうな、何とも言えない表情で尚もじっと視線を向けてくる。

「でもお顔の印象が……し、失礼ですが、整形手術かなんかをなさいましたか?」

「はっはっはっ、そんな事はしてません。
 唐突ですが、実を言うと我々は警察官なんです。
 特殊機動隊という秘密の組織なので、当初正体は明かせずにいたんですが
 ……自警団計画もその任務の一環だったんです。
 身分を明かさない為にも、変装が必要だったという訳で……」


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