ロ包 ロ孝
 ここは音力『城北ブロック修練所』俺達が通っていた場所だ。音力内に密偵を送り込む為に声を掛けた『海袋エンジェルス』の面々が顔を揃えている。

「音楽室か放送室みたいですね」

「うん、レコーディングスタジオっぽいよ」

 そう言う彼は縫製大学レスリング部に席を置く傍ら軽音楽部にも所属し、所謂『V系』のバンドでリードヴォーカルを取っている岡崎だ。

「そうか、今のレコーディングスタジオも変わってないんだな」

「ええ、そうです」

 俺が最初に音力を訪れた時も同じ印象を受けた。バンドで飯を喰って行けると思っていた青春時代に、デモテープ製作の為、レコーディングスタジオを何度か利用した事が有る。修練場はその雰囲気にそっくりだったのだ。

「今の……って仰いましたが、坂本さんも使った事あるんですか? バンドをなさってたんですね?」

「あ、ああ。若気の至りでな」

「へぇ〜。見えない見えない。あの体型じゃドラムかな、まさかヴォーカルじゃないよな!」

 渡辺が声をひそめて岡崎に耳打ちしているが、日頃気合いで鍛えられた太い地声は音量を押さえても尚、充分に聞き取る事が出来た。

「そのまさかで悪かったなぁ、達っつぁん。あいにく歌は体型で歌うモンじゃ無いんでな!」

 渡辺は慌てて口を手で覆い、あたふたと落ち着きなく言う。

「うわぁ、スイマセン。お詫びに『肩叩き券』を10枚差し上げますから!」

 子供かっ!

「ん……まぁ与太話はいい。で、今日来て貰ったのは事務所で言った事の捕捉と、我々が体得している秘術の体験をして貰おうと思ったからなんだ。
 ……おい達っつぁん! 聞いてるのか?」

 キョロキョロと辺りを見回して、まだ落ち着かない渡辺を叱り付ける。


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