ロ包 ロ孝
「丁度これから修練が始まる所だ。体験しておいで」


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 俺が召集したエンジェルスのメンバーは全て太い地声を持ち、性格的にも問題の無い人物から選出した。特に遠藤は忍術について造詣が深い所から。岡崎はヴォイストレーニングや声のコンディションを保つノウハウを持っている所からの人選である。

俺が最初そうだったように、皆にも【第一声】と【第二声】を体験させてみた。


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「ご苦労さん。体験してみてどうだった?」

 俺は新たに建設された集団用の修練ブースで話している。ここは全破壊の【前】(ゼン)以外の術を複数組み合わせて試行する為の設備が整えられていて、ブースの隅に椅子と机が数脚とホワイトボードが有り、ちょっとしたミーティングが出来るようになっている。

エンジェルスの面々は借りてきた猫のようにおとなしく座っていた。

「何でもいいんだ。感じた事を言ってみてくれ」

「ええと……コーラスの練習みたいなのをやらされました」

「皆さん真面目な顔して、ちょいキモだったんですけど」

「岡崎君はどうだった?」

 ヴォーカリストとして発声に詳しいであろう彼に振ってみる。

「はい。【第一声】は普通の発声をやりました。腹式呼吸からでしたね。
 そこら辺は完璧なんで俺は楽でした」

「自分達も気合いは腹から出してるから完璧だよな?」

 遅れを取るまいと渡辺が言うが、岡崎は無視して続ける。

「問題は【第二声】でした。俺も色々な発声を熟知しているつもりですが、あんなのは初めてです」

「そうか。クラシックやロックには無いかも知れないが、あれはモンゴルに伝わる歌唱法だ。
 ホーミーと言って、山岳地帯でも遠く迄歌声を伝える事が出来る発声なんだ」


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