ロ包 ロ孝
「そう。原理は違うんだが、我々が使っていた秘術は『声』を操る術なんだ。
 そしてその元となったのは忍術だ」

「そういう訳で私が……」

 遠藤が大きく頷き納得した。

「そういう事だ。岡崎君は発声に関する知識が豊富だろうから声を掛けた。
 他の皆は地声の大きさ、達っつぁんは……」

「自分の何がお目にとまったんでしょうか」

 きりっと襟元を正し、目を閉じ一歩前に進んで出た渡辺。

「達っつぁんはついでだ」

 どっと盛り上がるメンバー達。

「嘘だよ達っつぁん。達っつぁんはやれば出来る子だと思ったからな」

「ついでだったのか……やっぱりオマケなんだ、自分……」

 ガックリと肩を落としうなだれている彼を抱えながら俺は笑った。渡辺を入れたのはムードメイカーとして、そしてグループのリーダーとしてだ。

少し有頂天になる嫌いが有るので本人には言わないが、恐らく他の皆も解ってくれていると思う。

「じゃあコレも見てくれ。余り近付くなよ?」

 そして俺は幾つもぶら下げられている砂がぎっしり詰まった土嚢を切断の【陣】(ジン)で切り裂いたり、時速150kmで打ち出される野球のボールを盾の【列】(レツ)で跳ね返して見せた。

「凄い! 凄いですよ、坂本さん!」

「栗原さんも山岸……山崎さんも、これを使えるんですよね?」

 皆が盛り上がる中、渡辺は特に小踊りしながら興奮している。

「そうだ。だが達っつぁん。試合で使ったら駄目だぞ?」

 指を鳴らして残念がる渡辺。こういう場面では彼のようなガス抜きが必要だ。

「それと最も重要な事が一つ有る」

 俺は素質の事について伝える。そこだけは努力で如何ともし難いという事をだ。


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