ロ包 ロ孝
「最近は音痴や発声不全をヴォイストレーニングで立て直したりもしている。しかし、必ずしも全員が術を使えるようになる訳ではないんだ」

「そうか。それであの誓約書が効いてくる訳ですね?」

 俺の言いたかった事を先回りして聞いてくる遠藤。

「そういう事だ。重ねて言うが、もし術を修得出来なかったとしても誓約書の通り、音力内の情報を一切漏洩させてはならない」

 敢えてまた引き合いに出した『誓約書』という言葉を聞いて、一同に緊張が走る。

「それとこれは君達の将来にも関わってくるが、この術を修得すると……」

「ハイハイッ坂本さん。特殊機動隊になれるんですよね?」

 ここぞとばかりに食い付いてくる渡辺。

「ああ済まない。それなんだが、あれは表向きの話なんだ。特殊機動隊は存在しない」

「どういう事ですか! 自分は頭が悪りぃから、さっぱり解らないんですが」

「達っつぁん。朝令暮改ですまんな。誓約書を書いて貰ったから真実を言おう。
 ……我々は【音力】という、政府機関のエージェントだ」

 『誓約書』の部分を強調し、さらに拘束力を強めて言う。

「またぁ。なんだ達っつぁん!」

 性懲りもなく周りとコソコソ囁き合っている渡辺を一喝した。

「ひぇっ、すんません。朝礼の後に父母会って坂本さんが言うから……」

「ハッハッハッ。朝令暮改だよ。後で辞書引いて調べとけ!」

 俺の笑い声につられてみんなも笑っているが、本当に解っているのは多分遠藤だけだな。

「これはな、俺の家系に伝わる忍術なんだ。読んで字の如く、蠢声操躯法という。
 メモは取らないでいいからな」

 ホワイトボードに書きながら説明する。


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