ロ包 ロ孝
「口腔内を特殊な形にして身体全体を共鳴させ、細胞を活性化したり、音波を攻撃力や守備力等に変えたりするんだ」

 一同は狐につままれたように、ポカンと口を開けている。

「あの凄い術がただの声……」

「忍術って本当に有ったんですね。でも昔の話ですよ?」

「いや、逆に忍術だから信じられるという向きも有る」

 忍術に詳しい遠藤が言う。

「詳細は君達が或る段階を超えてから、また改めて話すよ。素質が有るか無いかは、正直やってみなければ解らないんだ。
 だからここで関わりたくないという人は身を引いて貰って一向に構わない。後はゆっくり家で考えてくれ」

 免許皆伝後の処遇についても話さないまま、返答の期限を1週間に区切って彼らに熟考するよう求めた。


───────


 返答を待つ間、俺はもう後戻りする事が出来ない自分を実感していた。栗原にせよ渡辺達にせよ、違う道を選ぶ事も出来た人間を自分と同じレールに乗せたのだ。

音力のまだ示されない謎の部分、その暗闇に飲み込まれないようこれからも油断せず、目を光らせて行かねばならない。それに仲間を失うのはもう御免だ。彼らに垣貫と同じ轍を踏ませる事は、どうしても避けなければいけないのだ。


∴◇∴◇∴◇∴


 渡辺、遠藤、岡崎の3人は、それぞれがそれぞれの理由で音力に興味を持ち、参加を決めた。結局声を掛けた6人の内5人が蠢声操躯法を修練する事となる。

祖父が要点を見るようになってから、修練中に危険が及ぶ事は無くなったが、エージェントとして活動を始めれば安全を保証する事は出来ない。

彼らが素質の問題をクリアしたら、そういった事も含めてもう一度きちんと話そうと思っている。


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