ロ包 ロ孝
 暫らく北田の愚痴に付き合いながら海袋駅へ戻り、西部海袋線で縁馬へと向かう。

北田が言っていたトランスポーターというのは俺達が使用する移動用の車両で、バトルスーツやダミー銃、フェイスストレッチャー等の備品を搭載し、簡単なミーティングルームとしても使用出来る多目的バスだ。

バトルスーツと同じ黒一色で塗られているから、一見すると右翼の街宣車に見えてしまうのが難点だが。

「すいません。お邪魔します」

 駅からの道はさほど入り組んでいなかったので、トランスポーターの場所はすぐに解った。

「こんな住宅地の真ん中で銃撃戦が起こったなんて、考えただけでもゾッとしますね」

 中へ入り、車体後部に備えられているミーティングスペースへと移動しながら誰へともなく俺は言った。

「坂本さん! わざわざ有り難うございます。
 周辺住民に被害が及ばないようにするのは大変でしたよ」

 満面の笑みで返して来た三浦はまだバトルスーツのままで、つい先程迄死闘を繰り広げていた事を伺わせる。

「みんな、坂本さんだ。今の音力の元を創った方だよ」

「そんな大層な。たまたま最初から関わってただけですよ」

 俺は大袈裟に手を振って三浦の発言を取り消した。他のメンバー達は無言のままである。

「北さんはどこへ?」

「は、はい。飲み物を買ってくるって丁度出掛けた所です」

 三浦だけが俺の質問に答える。他のメンバーはずっと黙ったままだ。改めてその場に居る面々を見回すと、何か微妙な違和感を覚えた。

三浦は他のメンバーに遠慮気味だし、その3人はと言えば何か憮然とした態度を取っているようにも見える。この居心地の悪さは一体何だろう。


< 234 / 403 >

この作品をシェア

pagetop