ロ包 ロ孝
「と、とにかくこれからは同じエリアで案件を分担し合って行く訳ですから、この調子でお願いしますね?」

 俺が言うと、その場を取り繕うように三浦が返す。

「こ、こちらこそよ、宜しくお願いします」

 他のメンバーは表情を崩さずに、無言のまま頭を下げただけだった。

「ああ、なんだか俺はお邪魔みたいなんで、早々に失礼しまぁす。北さんに宜しく伝えて下さい。お疲れさまでしたぁ」

 言っても俺は大人だ。理不尽な扱いを受けたとはいえ、その度に腹を立てていたら営業マンなど勤まらない。あくまで三枚目っぽく振る舞いながらトランスポーターから逃げ出す事にした。

しかしせっかく労(ネギラ)いの言葉を掛けに行った挙げ句がこの仕打ちでは、はっきり言って納得が行かない。

 何故俺が、こんなあからさまに奴らから拒絶されなければならないんだ?

俺の胸には沸々と、怒りの感情が込み上げてくる。

「キィィィィイ」

 俺は裏法である地獄耳の【朱雀】(スザク)を使って車中の様子を窺った。

『……っとみ浦さん! 坂も……なんて、……ート中のエリートじゃないですか! 折角の初オペレーション成功に、とんだ水が入ったもんだ』

 微妙に音程を変え、丁度いい周波数に合わせると、彼らの会話が明瞭に聞こえてきた。

『違うんだ。あの人は、坂本さんは違う!』

『何も違わないですよ! 忘れたんですか? 我々の誓いを!』

 そうか。彼らはエリート達に一泡吹かせるのも目標のひとつとしていたんだったよな。

事のあらましが理解出来ると、不思議と彼らへ感じた怒りが納まっていく。

『勿論忘れちゃいない。でも誓いの一部は課長だって知ってるんだ!』

 また課長って言ってるよ。何度も念を押したのに……。


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