ロ包 ロ孝
『三浦さんは奴の部下だった頃の意識がちっとも抜けて無いんだ!
 音力のトップエージェントがエリートじゃないなんて、笑っちゃいますよ』

 トップエージェントか。ちょっとくすぐったい響きだな。

そう聞いて、俺は少しいい気分になってしまう。

『話は後だ。坂本さんに謝ってくる。【者】(シャ)を使えば間に合うかな……』

 そう言うが早いか、トランスポーターのドアが開いて三浦が顔を覗かせた。

「三浦さん。左です、ひ・だ・り。駅と反対の方に居ますよ」

 伝達の【闘】(トウ)は直接相手の頭蓋骨を震わせるので声のする方向が解らない。俺は彼に居場所を教えてやらねばならなかった。

「!……!…………」

 ペコペコ頭を下げながら三浦が何か言っているが、そんな所で謝られても聞こえないし、中に居るメンバーにも気付かれてしまう。

「三浦さん【闘】です。トウを使って!」

 大袈裟に頭を抱えるジェスチャーをして、彼はこちらにいそいそと歩き出す。

『課長、スイマセン。あいつら根は悪い人間じゃないんですけど、勘違いしちゃってるみたいで……』

 【闘】を使いながら歩いて来た三浦が、俺のもとへ辿り着いた。

「解ってますよ、三浦さん。でも時期が来たら伝えて下さい。
 私だって祖父が居なかったら、こんなに早く免許皆伝になってはいなかったと」

「あんな態度をされたのに……やっぱり課長は尊敬に値するお方です!」

 うっすらと涙を浮かべながら彼は感動していたが、俺は一言囁いた。

「でも、三浦さん。もう課長はやめて下さいね?」

「そうでした坂本さん。でもホントにすみません」

 いつまでも頭を下げ続ける三浦の肩を抱いて「メンバーが心配するからもう帰ってあげて下さい」と促す。


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