ロ包 ロ孝
『では坂本さん。お仕事です』

 指定暴力団『猛虎』と勢力争いをしている、同じく暴力団『北討連合』

この2つの組織は縄張りが近く、シノギの種類や組の規模が似通っている事もあって、これ迄にも様々な小競り合いを繰り返して来た。

海袋商店街で行なったオペレーションの際に、所轄の手を煩わせていたのもこいつらだ。

先日三浦達が遂行した麻薬取引の案件では多くの逮捕者が出たが、その所為で今迄均衡を保っていた両者の力関係が崩れ、『猛虎』が『北討連合』を一気に制圧し、支配下に置こうとする動きが出てきた。

関東でも5本の指に入る両者が武力衝突するとなれば、互いに甚大な被害が出る。それに怖じ気付いて『猛虎』のチンピラが殴り込みの期日を密告して来たのだ。

捨て駒同然の下っ端達に取ってみれば、この組同士の争いはわざわざ死にに行くようなものであるから、彼らもバカらしかったのだろう。

情報屋等から裏を取ってみてもその線は濃厚らしく、両組織の大きさから俺達と三浦のチームが合同で事に当たる決定がなされた。

『今回の案件は非常に危険を伴います。しかし坂本さん三浦さん達エージェントの担当は、後方支援という形です。
 先陣切って突入するのは所轄に任せて、くれぐれも無理の無いようお願いします』

「解りました。出しゃばらないように気を付けます」


∴◇∴◇∴◇∴


「古内警部補、お久し振りです」

 当日、遠目からも良く解るハンチング帽を見付けて駆け寄った。

「お久し振りです坂本さん。海袋以来ですかな」

 パイプをくわえて振り返りながら彼は答える。

「あれ? 古内警部補。パイプなんて吸われてましたっけ?」


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