ロ包 ロ孝
「遅くなってすみません。もう、片付きましたか?」

 人を小馬鹿にしたような関の物言いにはカチンと来たが、ここで言い争っても仕方がない。俺は一呼吸置いて聞いた。彼は得意そうに胸を張って返してくる。

「当然でしょう。我々に掛かればこんな案件、雑事のひとつに過ぎませんよ」

 昔の里美と全く同じ口振りだ。しかし、彼らは自分を過大評価してはいないか? このまま放置して良いものだろうか……。

でもそれを今言ったところで、忠告を素直に受け入れるような相手ではなさそうだ。

「関さんや三浦さんにお任せ出来ると私も心強いです。
 我々も負けないように精進させて貰いますよ」

 関は「フンッ」と鼻で笑うと、嘲笑気味に返してくる。

「あなた方が後生大事に守っておられるタダの蠢声操躯法だけでは、とても我々に対抗出来るとは思えないんですがねぇ。ハッハッハッ」

 ところがそれだけじゃないんだぜ?

……危うく喉元迄あがってきた言葉を飲み込んで、俺はその場を後にした。


───────


「ああムカつく! 坂本さん、いいんすか? あんな好き放題言わせておいて!」

 俺が答えるより早く里美が栗原をたしなめていた。

「あたし達の手の内を明かす訳には行かないでしょ? 言いたいようにさせておけばいいのよ。カッカするだけ馬鹿らしいわ?」

「でも、納得いかないっスよ、俺は!」

「まぁそう言うな。彼等は彼等なりにやっとの思いでここ迄這い上がって来たんだ。
 それに色々と事情が有ってな。
 三浦さんが彼らとの関係を取りなしてくれる迄、気長に待とうじゃないか」

 遠くの方で三浦が頭を下げている。俺は親指を立てた拳を突き出し、彼の功績を労った。


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