ロ包 ロ孝
「案件自体は比較的早く見つかったんですが、情報収集をして作戦をここまで練り上げるのに半月近く掛かった訳ですよ。ああ、以上ですが、ご質問は?」

「……無いです。一切、断じて、全然、ひとつも有りませぇ〜ぇん」

 何を疑問に思ったかも忘れてしまう程長い説明で、俺達はすっかり萎え萎えになっていた。

「あぁーっ、疲れた! 北ちゃんは話が長いから、結局の所、良く解らないのよねっ!」

「またまたぁ。サトッチはすぐに挙げ足を取るんだからぁ」

「挙げ足じゃ無いわよ、北ちゃん。あれを見てご覧なさい。淳も栗原もホラ、トロケちゃってるわよ?」

 北田の長い説明に耐え兼ねて、俺も栗原もぐったりと椅子にしなだれ掛かっていた。

「ありゃま……」


∴◇∴◇∴◇∴


「わぁっ! 景色がいいわねぇ〜。なんかバカンスに来たみたいじゃない? ィヤッホォーォオ!」

「里美ぃ。山じゃないんだからこだまは返ってこないぞ?……しかも窓閉まってるし」

 しかし里美の大声でビリビリと震えているその窓から臨む風景は、絵葉書きのように美しい。部屋もこれといって目新しさは無いが、却ってのんびり過ごすには絶好の雰囲気だった。

俺達は現場の廃ホテルからそう離れていない宿に部屋を取って、攻撃の拠点とする事にした。3人は兄弟で観光に訪れた旅行客を装っている。

「里美さぁん。ごろにゃぁぁん」

 甘えに行った栗原をサッとかわし、俺に抱き付いてくる里美。

「せっかくだったら淳と2人きりなら良かったのに、ねぇ〜」

「俺はお邪魔虫か、うにゃぁぁ〜っ」

 オペレーションが無ければこれから観光にでも繰り出す所だが、俺達は夜の行動に備えて布団を準備しなければいけない。


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