ロ包 ロ孝
「でも偵察の予定はどうするの?」

「今日はひとまず切り上げよう。賊が居たんじゃ危険過ぎる」

「そうね。その方が良さそうね」

「それではこうしよう。廊下を宴会場と反対方向に移動して一旦ポイント6、この中庭に出る。
 そして螺旋階段を登り、ホールの屋上から従業員通路に入るんだ。
 それから栗原、次が里美、最後に俺が駆け抜ける。
 栗原には俺が、里美には栗原が、俺には里美が【玄武】を放つ。それでいいな?」

 栗原が神妙な面持ちで前に出て言う。

「俺、どうせだったら山崎さんから【玄武】を放って貰いたいっス」

「アホ、勝手にしろ」

 とにかく出来るだけ早くここから脱出しなければならない。何の心構えも無い今、賊と交わる訳にはいかないのだ。

「でも、なぜ盗聴器を付けなかったんすか? 賊の会話が聞けるのに」

「盗聴器は発見され易いんだ。電波で飛ばすタイプは特にな」

「そうなんすか……知らなかった」

 モニターに目をやると、宴会場以外は全て緑の表示になっている。賊の移動が落ち着いたようだ。

「よし、出発しよう」

 ポイント6に出る途中の地下へ降りる階段を下り、かつてはこのホテルの名物だった鍾乳洞風呂の裏手に回ると発電機が有る。

突入の際にはこれを破壊出来るか否かが最大の鍵となる。

「ああっ! とっとっ」

 壁の落書きに気を取られていた俺は、剥がれた絨毯に足を取られてしまった。

「坂本さん、静かに!」「淳、駄目よ。声出しちゃ!」

 2人同時に怒らなくたっていいじゃないか……。


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