ロ包 ロ孝
「まずいな、監視が居るぞ?」

 そして俺達は何とかポイント6の中庭に辿り着いたが、そこには賊が1人見張りとして立っている。

この地点からは車道が良く見通せる為、車での侵入者を発見するのに都合がいいようだ。

「あんなの楽勝っすよ、俺がやります。ヒョォォォォオ」

 栗原が【在】の裏法である、羽虫を操る【三台】(サンタイ)を放った。

  ブ……ブ ブブゥゥ〜ウン

 たちまち周りの草むらから虫が飛び立ち、塊となって見張りに襲い掛かる。

「うわわわっ! 痛てっ! 何だコリャ、ペッペッ」

 甲虫に体当たりされたり小さな羽虫が口の中に迄入り込んだりして、見張りの男は右往左往している。

「駄目だ、目も開けられやしない」

 両手で虫を追い払いながら、男は屋内へ逃げ込んだ。

「よし、もういっちょ。ヒョォォオ」

 栗原は駄目押しとばかりに見張りが逃げ込んだドアへ羽虫の大群を送り込む。

「誰かぁぁぁ……」

 男は悲鳴を残し、建物の奥へ消えて行った。

「よし今だ。中庭を走り抜けて階段を駆け登れ!」

「行くわよ? フゥゥゥゥウ」

 里美が3倍力の【者】を使って走り去る。

「次は栗原だ、行け!」

 そして後方を確認して最後に辿り着いた俺だが、2人はまだ階段のふもとでグズグズしている。

「なんだ、どうかしたのか?」

「それが淳、どうしよう。階段が錆びでボロボロになってて登れないのよ」

 試しに手摺を押してみると、まるで飴細工のようにいとも簡単に崩れ落ちる。手入れもされず、潮風に吹かれ放題の鉄骨階段は、見るも無残に朽ち果てていた。


< 257 / 403 >

この作品をシェア

pagetop