ロ包 ロ孝
「北田の部下は階段の強度迄確認しなかったんだな。
 まぁいい、空中浮遊の【北斗】(ホクト)を使おう。
 栗原は得意じゃなかったな。なんなら【空陳】で飛ばしてやろうか?」

「そんなぁ。自分で頑張りますよぉ。ヮァァァァア、ワッああっ!」

  ドスッ

「あ痛だだだっ!」

 術が強過ぎて必要以上に高く舞い上がってしまった栗原は、屋上に打ち付けられた。

「ヘッタクソねぇ。こうするのよ。ワァァァァアア」

 里美のはまるでエレベーターにでも乗るかのようにスムーズな【北斗】だ。

「奥に有るのが従業員通路だからな。賊に注意して進め。ヮァアッ」

 俺も【北斗】を短く放って屋上に飛び乗り後を追う。2人が待機していた入口から様子を窺うと、従業員通路の奥には、エントランスに入ってきた明かりが見えている。

「賊は居ないようだな。栗原、里美が【玄武】を放ってから【者】に入れ」

「了解っす」

「向こうに行ったら【闘】で様子を知らせるんだ。
 非常事態になるようなら【前】(ゼン)でそこらじゅうの物を吹き飛ばせ。俺と里美もすぐ駆け付ける。
 ただ……【前】を使う時は、くれぐれも声の振り戻しに注意しろよ?」

「解りました。大丈夫っすよ」

 賊と出くわさない事を祈るのみだ。栗原にはなるべく【前】を使わせたくない。

 祖父に習った完璧な術ではあるが【臨】〜【陣】と【前】の難易度は格段に違う為、失敗する可能性が有る。その事態を収拾するにはまだ、栗原の経験は浅過ぎるのだ。

「行くわよ? 栗原。フゥゥゥゥウ」

 里美が【玄武】を放って栗原の力を3倍にした。


< 258 / 403 >

この作品をシェア

pagetop