ロ包 ロ孝
「あっ、ああっ! 里美さん! 俺、なんだかみなぎって来たっす! フゥゥウウウ」

 意味有りげなやり取りを交わすと、栗原は矢のように走り出す。従業員通路は余り散らかっていないので、たちまちエントランス付近へ到達した。

『坂本さん、大丈夫です。こっちに賊は居ません』

「よし里美。気を付けてな。フゥゥゥゥウ」

「淳が付いてるから大丈夫よ。フゥゥゥウ」

  タタタタタタッ

 【玄武】を送りながら里美を見送る。しかし女走りであれだけ早いとかなり不気味だ。

「よし里美、やってくれ」

 俺が【闘】で呼び掛けると栗原が言った。

『坂本さん! 俺も【玄武】を放ちます! そうすれば27倍活性になるんじゃないスか?』

 と提案してきた。なるほど3の3乗倍活性か。このスーツが保てばいいが……。

「何だか凄そうだな。やってみてくれ」

 2人から放たれた【玄武】に依って、体に力がみなぎり、バトルスーツを筋肉がぱんぱんに満たしていく。

 確かにこれなら凄い事になるかも知れない。

「いくぞ。フゥゥゥウッ」

 俺は期待を胸に、力を込めてスタートした。

  ダダダダダッ

「はぁっ、はぁっ、どうだった?」

 全力で走り切って里美達の元へ到着した俺は、息も絶え絶えに尋ねた。

「ううぅん。……淳の早さ、大して栗原と変わらなかったわよ?」

「おかしいなぁ。手応えは有ったのに」

 どうやら同じ術同士(【玄武】と【玄武】)では積にはならないらしい。ひとつ勉強になった。

「おぇっ、おぇえっ」

「栗原、どうかしたか?」

「いや、何だか吐き気がするんすよ……」

「あら、アタシもよ?」

 実は俺も9倍活性を使ってから胃の具合がおかしかった。


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