ロ包 ロ孝
「解った!」

 巻物と首っ引きで箪笥をいじりまわしていた里美が小さく叫んだ。

「何? どれどれ」

「これ、引き出しを開ける順番で鍵が外れるんだけど、ここがその仕掛けの有る場所なのよ」

「箪笥の裏側か! なるほど、裏は壁に守られているんだもんな」

 俺達は早速箪笥を移動させる。

  カチッ

 箪笥の中で何かが作動した音がすると、

  パンパンパンッパパン!

 火薬が立て続けに破裂して、俺達は慌てて身体を伏せた。

「ああ、これが防犯装置じゃったか」

 事も無げに祖父は言うが、俺も里美も驚きで心臓が口から飛び出しそうになっている。

「これも家具屋が付けたんじゃよ。賊を追い払うのと、その侵入を報せる為じゃ」

「ったく。言っておいてくれないから、鼓膜が破れるところだったぞ?」

「儂も今しがた迄忘れとったんじゃから、仕方ないじゃろ」

 尖らせた口が真っ白な髭の中から顔を出した。

 ……まったく!

 子供じゃ無いんだから可愛子ぶるのはよせ!

「でもお爺様、背板を外してしまわないと仕掛けが解らないんですが……」

「よし里美、後は任せろ。爺ちゃん、ぶっ壊すぞ?」

 俺は道具箱を引っ掻き回して使えそうな獲物を選んで持って来ていた。

「仕方なかろう。……大枚はたいたんじゃがのぉ」

 そうして俺は背板を引き剥がし、里美がひとつひとつ鍵を合わせていく。

「これでいい筈よ? 坂本さん」

 余りの手際の良さに少し畏れをいだいたが、今までも何かに付けてそんな風だったので、俺は平静を装って返していた。

「よし、開けるぞ?」

 さっき迄はぴくりともしなかった引き出しが、嘘のようにスルスルと開いた。

「おう、これじゃこれじゃ」

 祖父は引きだしの更に奥へしまってあった巻き物を大事そうに取り出した。これでようやく核心に触れる事が出来る。

「保存状態がいいですねぇ」

「大した事はしてないんじゃがな。やはり桐の箪笥は優れ物じゃよ。
 しかし慎重に扱いなされ。紙が脆くなっとるでの」


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