ロ包 ロ孝
「その時、淳はどうしてるの?」

「俺はしんがりを護る。お前達に賊の指が1本でも触れないよう死守するさ」

「さすが淳ったら頼もしいわぁ。
 こいつとは大違いネ」

 猫の喉を撫でるように栗原を弄んでいた里美がいきなりその頭をペシッと叩く。

「ふにゃっ? 俺だっていざとなれば、ビンビンに逞しいっすよ!」

「ばか、逞しいじゃないわよ。頼もしいって言ったの!」

 またネタが始まったが、真剣に打ち合わせておかないと後で困る。俺はそのまま話を進めた。

「お前ら、漫才はいいがその後の流れは解ってるのか?」

「漫才ってなによ! 発電機を止めたら、その足で武器庫に行って武器を破壊すればいいんでしょ?」

 栗原を羽交い締めにしながら里美が答える。

「それなんだが、破壊するのはどうかと思ってな。
 暴発等の危険も有るから武器は機動隊に任せるのがいいだろう。
 我々は賊を1人も逃さないように力を尽くせばいい。ルートの確認をもう1度するとな……」


──────


 打ち合せを終えた頃にはすっかり夜が明けていた。

「はぁぁ……疲れた。今日の晩飯が楽しみっスね! 何が食べられるのかなぁぁ」

 深い溜め息を吐いた栗原はその後、すぐさま晩飯に思考をシフトしている。パチンコ店での失敗以来、奴はポジティブシンキングに努めるようになった。その効果は絶大であったが、お調子者度が格段に増したのも事実。

加減とか塩梅という事も少しは教えて行かねばなるまい。

「そうだな。でももう寝ろ。里美もな」

「はぁい。お休みなさい」

 予定外の緊張にかなりの消耗をしてしまった俺達は、瞬く間に夢の世界へと落ちていった。


< 261 / 403 >

この作品をシェア

pagetop