ロ包 ロ孝
 向き合ってほのぼのしながら、下着姿の里美と栗原が喋っている。

「スイマセン! つい見とれてしまってて……」

「あら、減るもんじゃなし。そんな気にする事でもないのに」

 事もなげに言う里美。

「……普通は気になるのっ! いいから早く着替えなさい」

 今日はまだ色気の無い下着だったからいいようなものの、里美本気の勝負下着だったら栗原だって襲い掛かり兼ねない。

「フフ、でも嬉しいな。淳から焼きもち妬いて貰っちゃった」

「お、俺は常識の話をだなぁ……」


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「お待たせ致しました」

 バタバタと体裁を整え終わると、程なくして夕食が運ばれて来た。追加可能なオプションを全てお願いしたので、さぞ豪勢な物になっただろう。

「おおぅ、こりゃ凄いな」

 まず運ばれて来た舟盛りの豪華さに思わず声が出た。生け作りの魚が暴れて刺身がこぼれたりしている。

「良かったな。念願のご馳走じゃないか」

「これが無いと温泉に来た甲斐が無いっすからね、坂本さ……いやお兄さん」

 給仕さんの手前、兄弟の振りをしなければならないのが億劫だ。次からこういう事が有ったら別々の部屋を取って貰った方がいいだろう。


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 机に並び切らない程に乗せられた料理はどれも美味で、俺達はそれを心行く迄堪能した。

「とても全部は食べ切れないわね。ちょっと心が痛むわぁ」

 豪華料理の半分は、食べ切れずに残ってしまっている。

「いや、これでも頑張った方だよ。な? 栗原」

「……ぐるじぐで、コメント出来ないっス」

 栗原は見た目で解る程の太鼓腹を抱え、悶え苦しんでいた。

「おいおい、そんなんじゃ術の修練なんか出来ないぞ? 【者】(シャ)を使って宿の周りをランニングして来い!」


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