ロ包 ロ孝
「もう人気(ヒトケ)も無いし、ここら辺でいいんじゃない?」

「まだだな。ホテルに音が響かないような所に行かないと」

 懐中電灯を頼りに鬱蒼と生い茂る道を行く。ひと山越えて暫らく歩くと広場のような場所に出た。

「よし、ここにしようか」

「はぁ良かった。もう歩くのにうんざりしてた所よ?」

 顔に掛かった蜘蛛の糸を払いながら里美が言う。ここには手頃な太さのツルも沢山下がっているし、発電機から伸びる動力ケーブルを切断する訓練にはもってこいの場所だった。

「里美はそっちで【南斗】(ナンジュ)の修練をしていてくれるか? 幅広じゃない、威力を一点に絞った術を心掛けてみてくれ」

「うん。解ったわ」

 【南斗】は【陣】(ジン)の裏法で、【陣】が日本刀のように切り裂く物だとしたら、鉄パイプで叩き潰すのが【南斗】と言える。

「じゃあ俺達はこっちで【陣】を地面と直角に、出来るだけ低く放つ訓練をしよう」

 動力ケーブルは恐らく地面に這わされているだろう。発電機との接続部は地面から30センチ程の高さだから、そのケーブルが持ち上がった部分を切るしかない。

ここが成否の分かれ目だけに、確実に術を決めるのが必須となる。

「あたしは先に始めてるわね。シュッ」

  ズドン!

「ゥシュッ」

  ドンッ!

 大木の木肌が醜く抉れて行く。

「ああ、森林破壊だわ。ごめんなさい。ウシュッ!」

  ボゴッ!

 大木の真ん中に大穴が開いた。

「さすが里美だな。その感じを覚えておいてくれ」

「じゃ、アタシはもう見学でいいのかしら? ウシュ、ウシュッ!」

  バゴッ バゴッ!

 最初に開けた穴に並べて【南斗】を放つと、だんごのように連なった穴が大木を貫いていた。


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