ロ包 ロ孝
 センサーの表示に依ると、居室の半分近くが人の存在を示す赤になっている。

「かと言っていつ迄もここに居る訳にはいかない。そろそろ行かなきゃな」

 発電機の有る場所は賊の居る宴会場とは反対側になる。まずそちらから回り、電源を落として賊の目を奪ってしまうのが先決だ。

「足元に注意しろよ?」

 ロビーから遊技場を抜け、客室がいくつか固まったブロックを通過する。その先、地下に降りる階段に通ずる通路は特に足場が悪い。そこら中で絨毯がめくれて波を打っている。

「おっと、ほんとグチャグチャっすね。そうだ、坂本さん。俺はここで見張ってますよ。
 みんなで中に居る時に賊が来たら、それこそ袋の鼠になっちゃう」

 階段の入り口で栗原が言った。なるほど、確かに良い状況判断だ。落ち着いているというのも頷ける。

「それもそうだな、それじゃしっかり頼んだぞ?」

 俺と里美は栗原をその場に残して階段を降りた。しかし、作戦は守るべきだったのだ。


───────


「ほんと、これが無かったら真っ暗闇ネ」

 発電機が併設された鍾乳洞風呂は、地下に10メートル程下がった所に有る。賊は懐中電灯を頼りに階段を降りていくのだろうが、俺達の暗視スコープは昼間の様に明るく闇を照らし出している。

「ここを転げ落ちたら大変だ、気を付けてな」

 かなりの段数を降りた後で階段が大きく折れ曲がると、目の前が急に開(ヒラ)けた。

「おおっ、確かにこれは名物にもなるな」

「ほんとに……素晴らしいわねぇ」

 2人の声が洞窟に響き渡る。


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