ロ包 ロ孝
 俺達は洞窟の天井から下がっている見事な鍾乳石に暫らくの間見入っていた。薄緑色に光った暗視スコープの映像は、より幻想的な雰囲気を醸し出している。

「……あ、こんな事をしている場合じゃなかった。行こう」

 発電機は奥のパーテーション裏に有る。俺達はそのドアをくぐるなり切断の【陣】と叩き潰す【南斗】(ナンジュ)を放った。

「シュッ! シュゥッ! シュシュシュゥゥッ!」「ウシュッ! ウシュッ! ウシュッ! ウシュウシュッ!」

  ドゴッ ズバッ ドスン グシャッ ババッ……

 もうもうと立ちこめる埃の中、ケーブルは四方八方へ飛び散り、発電機は鉄の塊と化した。

「ゴホッ、オホンッ。よし片付いたな、引き上げよう」

「ケホッ、置いてきた栗原が心配だわ」

「奴なら大丈夫さ、今日は落ち着いていたからな。でも念の為急ぐか」

「フゥゥゥゥウ!」

 俺達は階段を【者】で駆け上がり栗原の元へと走った。

「意外と簡単だったぞ? 栗原! ……栗原?」

 だが、そこに彼の姿は無かった。


───────


「おい、栗原! 聞こえていたら返事をしろ!」

 伝達の【闘】を使い呼び掛け、地獄耳の【朱雀】を使い聞き耳を立てるが、なんの応答もない。

「淳、無理よ。こんなに入りくんでたら、壁が音を吸ってしまうわ?」

 そうだ。まだ賊に捕まったという確証はない。奴なら大丈夫。奴なら……。


∴◇∴◇∴◇∴


「やっばいなぁ、坂本さん達にはああ言ったけど、電波が悪くて見取り図も見られないよ」

 里美と俺を見送った後、栗原はそう独りごちていた。

展望ロビーからの通路にひとつセンサーが付いているが、栗原はそれを携帯で確認しようとしていたのだ。


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