ロ包 ロ孝
 自位置が計測出来て初めてセンサーの表示が出るシステムの為、GPS衛星からの電波が受信出来ない今、センサーの作動状況が全く解らない。心細くなった栗原は、地獄耳の【朱雀】を使った。

「キィィィィィイ」

 周波数を変えて何度か試みたが、何も聞こえて来なかった。

「閉鎖された空間だからかな……とにかく退路の確認をしないと」

 そう言って展望ロビーの方へ歩き出した時だった。

  ガツッ! 「あうっ!」

 後ろから肩口に鉄パイプを打ち下ろされ、栗原は意識を失った。


───────


「凄いぞ! コレ。これが有れば我々の夜の活動も楽になる」

 その声で栗原は息を吹き返した。薄目を開けて辺りの様子を伺う。キャンプ用のランタンで照らし出されているそこは、雰囲気から見てどうやら宴会場らしい。

賊は暗視スコープをいじっているようだ。栗原はヘルメットを脱がされ、後ろ手に縛られた上、床に転がされていた。

「しかしこの男はどうしたものかな。おい、本部から返答は有ったのか?」

「それが……連絡は入れたんですが、まだ何も言ってきません」

「各所を見に行った奴らもまだ帰らないし、どうにも動きようがないな」

 つっ……肩痛てぇ……。こいつら俺の処分に困ってるみたいだな……。

栗原はその時、大変な事態に気が付いた。

 ……やばいよ。さるぐつわを噛まされてる……。

声が出せなければ反撃も出来ない。彼は最悪の状況に陥っていた。

「これだけの装備で乗り込んで来た訳だから、間違いなく敵だ。
 前のガキ共みたいに探険が目的で来た訳じゃないだろう、公安の犬か?」

 まぁ惜しい所だな。政府の手先なんだし。


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